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2018年12月7日(金)緊急集会「安楽死・尊厳死の問題点と介助者確保について」が開催されました

2018年12月07日 イベント尊厳生

集会の様子

2018年11月28日、憲政記念館において「安楽死・尊厳死の問題点と介助者確保について」と題した緊急集会が開かれました。

この問題に関心のある障害当事者・関係者で会場はいっぱいになりました。

国会議員の方々も駆けつけ、力強いご挨拶をいただきました。どの先生も、昨今の「尊厳死法制化」の流れに危機感をいだいているようでした。

一部報道では、今年8月末から与党の一部で尊厳死法制化の案を練り直し、早ければ来年の通常国会への法案提出を目指す動きがあるとされています。また、従来の案はリビングウィル(事前指示書)の法制化を目指す内容でしたが、今回はACP(Advance Care Planning)を中心に議論されているとも報じられています。

ACPとは、患者、家族、多職種による継続的な対話を通じた合意形成のことです。

鳥取大学医学部の安藤泰至さんからのお話

講師の一人目として、鳥取大学医学部の安藤泰至さんから「安楽死・尊厳死をめぐる言説のからくり~『人のいのちを守る』生命倫理へ~」と題してご講演いただきました。

鳥取大学医学部の安藤泰至さん
医療や福祉(対人援助)の本来の目的は、「生命」「生活」「人生」「いのち」といったすべての次元で、人が人として生きることを支えるものであること。

「安楽死」や「尊厳死」という言葉には共通の定義などないこと。

「安楽死」について考えるためには、行為の目的や意図によって分類するのではなく、実際にどのような行為をするのかによって分類することが重要であること。

「尊厳死」という言葉は「特定の行為」ではなく「あるイメージ」を指す言葉であること。
そしてそれはとてもあいまいであり、「よい死」という含みがあること。

「自己決定」という言葉が、特定の選択をした場合、本人や家族が大きな負担を背負わされるような状況の下での選択である場合、まやかしのように使われてしまう可能性があること。

「死の自己決定権」という言葉は多層的であること(①死に至るまでをどのように「生きるか」についての選択(ここに「死の自己決定」を使うのは混乱のもと)、②「延命治療」によってどのような生が可能になるのか、どのようなサポートを受けられるかの情報(特に医療以外)、③積極的安楽死や医師幇助自殺)。

延命治療は「尊厳死」とは逆に「悪いもの」のような含みがあること(しかし、生きている時間を延ばすという意味ではほとんどの医学的治療は延命治療ということになる)。

「延命」それ自体とQOLとは切り離して考えるべきであること。そしてQOLは誰かと誰かを比較してその高低を決めつけて医療的ケアの意義に大小をつけることは優生思想に浸かっていること。

何よりも、「死にたい」と言っている人を「死なせる」ことの是非を語る前に、その人たちが「死にたくなくなる(生きてみたくなる)」手立てを十分に尽くしているか。そして、それぞれ個人の「生き方」を追求することが尊重されるような社会を構築してきたのか、という問いかけにはハッとさせられました。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の当事者であり、医師でもある竹田主子さんからのお話

続いて、竹田主子さんより、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の当事者であり、医師でもある立場からご講演いただきました。

竹田主子さん
竹田さんは、発病当初は絶望感に打ちひしがれていたものの、その後、支援や介助を得て、今では医療コンサルタントや学校で講義などをされています。

また、メールやラインを使ってコミュニケーションを取り、ファッションなどの自己表現活動もされています。中途障害では受容までに時間がかかりますが(竹田さんは4年かかったそうです)、価値転換・価値観の拡大が重要とのことでした。

他者との「比較価値」ではなく自分の「資産価値」へのシフトが重要であることを、改めて学びました。その前提として欠かせないのが、重度障害者への24時間の介護保障です。

竹田さんから、さらに冒頭で紹介したACPの問題点を障害者の立場から解説していただき、以下の指摘を挙げられました。

法律やガイドラインに正直に従ったために正当な「治療」を受ける権利を奪われる可能性がある点。
「延命治療」に際して、その現場の「雰囲気」を覆すことが困難になり、サービスが差別される可能性がある点。

その上で、障害者がACPを有効活用するには、自分の病気、置かれている状況、福祉制度、医療機器について知識を得ること、現代ではSNSや患者会などを活用して情報を得ること、「延命治療」に対する意思表示を保留にすること、信頼できない医師や看護師は早めに変えることが重要であると説明されました。

加えて、立法や行政にお願いしたいこととして、重度訪問介護の支給時間の拡大、処遇改善加算切り下げの回避、事業所の収支改善やヘルパーの処遇改善を挙げられていました。そしてACPガイドライン/法案の中に、「重度障害者は24時間の介護保障を前提条件としてACPを行わなければならない」と明記すべきだと結ばれました。

生きることを支える法律がほしい

その後、司会の川口有美子さんより「今まで2回、尊厳死法制化の法案上程を阻止した。医学部では制度をあまり教えないので、当事者の人権を守る体制を整えるべき」という発言がありました。

会場からは、バクバクの会~人工呼吸器ととともに生きる~の大塚孝司さんから、ご家族の立場として「結論を急がず、みんなで悩んで考えるのが命ではないかと思う」という趣旨のご発言がありました。

DPI日本会議特別常任委員でCILふちゅうの岡本直樹からは、今年亡くなられた故鈴木一成さんの話から、「現代は死に誘導するような風潮がある。生きることを支える法律がほしい」。

同じくDPI日本会議特別常任委員でALS/MNDサポートセンターさくら会の岡部宏生からは、「ACPには問題点が多い。重度障害者とのコミュニケーションをどのように取るのか、考えてほしい」といった発言がありました。

主催団体のDPI日本会議常任委員の中西正司は「終末期問題はそもそも国家が縛るものではない。必要な介助がきちんと提供されることが重要。それを満たした上で本人の意思決定が大事。重度訪問介護の拡大は欠かせない」と発言しました。

同じく主催団体の全国脊髄損傷者連合会の大濱眞さんからは、「リビングウィルがACPになったが、今後の動きに注視が必要。医師たちを巻き込んで運動していくことも視野に入れて展開していきたい」という趣旨の発言をされました。

最後に

集会の最後に、以下の宣言文が採択されました。

「私たちは、24時間の介護保障なくして、安心して終末期を迎えることができない。介護保障なき治療の不開始と停止を、私たちは一切認めることができない。」

改めて、「安楽死・尊厳死」という言葉に潜むからくりについて学び、根底に潜む優生思想と向き合う機会となり、24時間介護を受けながら地域で生き生きと生活する当事者の姿に、死ぬための法整備ではなく、生きるための法整備こそ必要なのだと考える集会となりました。

(事務局 鷺原由佳)

▽本集会の開催報告書はこちら(PDF)


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