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【報告】3月27日(水)インクルーシブ丸ごと実現プロジェクト成果報告集会

2019年04月15日 イベントインクルーシブ教育障害者文化芸術

会場に参加者がいっぱいいる様子

去る3月27日、参議院会館講堂にて「公益財団法人キリン福祉財団助成事業 インクルーシブまるごと実現プロジェクト」の成果報告集会を行いました。

この事業はキリン福祉財団から助成をいただいて障害者の文化・芸術やインクルーシブ教育に向けて昨年度から取り組んでいるものです。

昨年度を含めて3年間行われる予定の事業で、その1年目の成果報告集会となりました。

当日のプログラムとしては、午前中に文化・芸術の報告とバリアフリー映画の上映が行われ、午後からインクルーシブ教育に関しての事例報告やディスカッションなどが行われました。

当日は【公明党】山本博参議院議員、【自民党】古川康衆議院議員、今井絵理子参議院議員、【立憲民主党】初鹿明博衆議院議員、近藤昭一衆議院議員、【立憲民主党・無所属フォーラム】金子恵美衆院議員、【社民党】福島みずほ参議院議員にご参加いただき、ご挨拶頂きました。(順不同)

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ソーシャルインクルージョンの視点に基づく障害者文化芸術

障害者文化・芸術については取り組みの企画や勉強会からご協力いただいているバリアフリー映画研究会理事長の大河内直之氏より、バリアフリー映画の沿線や普及に対する課題などについてご講演していただきました。

大河内直之さん講演の様子

大河内氏からは、バリアフリー映画が「視覚・聴覚に障害のある人は映画を楽しんでいるのか」というところから出発していること。

現状は視覚・聴覚のどちらかだけでは充分に楽しめていないことも多く、バリアをどうやって取り除くかということで始まった取り組みである旨が語られました。

また、会場にいる参加者にバリアフリー映画がどのようなものなのかを伝えるために実際の映像素材を用いて、音声ガイドや字幕の有無でどのように伝わる情報量や楽しみ方が変わるかを解説していただき、複数の情報保証が重なりあうことで奥行きのあるイメージができることを体感しました。

近年発達してきているスマートフォンなどのアプリケーション「UDCast」について紹介していただくと共に普及に関する今後の課題について述べていただきました。

大河内氏に講演をしていたいただいた後には、バリアフリー映画『しがらきから吹いてくる風』を上映しました。実際に上映することで、情報保証の大切さや「誰もが楽しむ」ということについて、より分かりやすく参加者の方に伝えることができたのではないかと感じています。

インクルーシブな子ども時代づくりプロジェクト

続いて午後からはインクルーシブな子ども時代づくりプロジェクト、つまりインクルーシブ教育に向けた取り組みについて報告が行われました。

最初に名古屋在住の呼吸器ユーザーで地域の中学校に通う林京香さんと父でバクバクの会副会長の林智宏氏より、普通学級での合理的配慮の事例と課題などについて基調報告をいただきました。

左が林智宏さん、右が林京香さん

お二人の報告によれば、京香さんが小学校就学前に改正障害者基本法が施行され、地域社会の多様性に貢献することがクローズアップされたのをきっかけに名古屋で初めて普通校へ通うことになったそうです。

学校生活の実際の様子などを写真で解説していただいたのですが、いつも友達に囲まれている京香さんの姿が印象的でした。

共に生活し、学び過ごすことで感性が磨かれ、他の友人やクラスメイトが京香さんに対する接し方をわかっていることを実感されており、生活の工夫や合理的配慮も「共に」が重要であると述べておられました。

なお、京香さんは昨年の春から地域の中学校に通っておられ、生徒や他の先生とのコミュニケーションの橋渡しをしている主幹教諭や学校長、看護師などの連携により授業の見学といった学習空白を無くす体制が取られているとのことでした。

学校生活における合理的配慮については学習方法の変更、学習内容の変更、周囲の変更調整といった3パターンがあり、ご本人の目線を大事にしながらみんなで一緒に楽しみながら考えている様子が紹介され、京香さんと智宏氏からは社会モデルやインクルーシブの視点をもっと広めていきたいと締めくくられました。

続いては横須賀で障害児と健常児が共に通うインクルーシブ学童「sukasuka-kids」を運営している五本木愛氏とDPI日本会議の崔によるトークセッションが行われました。

五本木愛さん 崔栄繁

五本木氏によれば、近年は障害児の放課後デイサービスが急増しており、学校は普通校に通っている場合でも放課後を過ごす場は障害の有無によって分けられている現状があるそうです。

しかし、五本木氏はご自身の娘さんが障害当事者であり、障害児の親という立場と経験などから障害児と健常児が一緒に過ごせる場を作る必要性を感じ、sukasuka-kidsを立ち上げたとのことでした。

一般的な学童は、学校内にあるものが増えているようで、その学校に通う子どもしか通えないことが多いそうですが、sukasuka-kidsについては地域の商店街の真ん中にあり、学年も学区もバラバラ障害のある子もない子も一緒に過ごすといったインクルーシブな環境の中で子どもたちが育ち合っている点が特長であるそうです。

また、学童を利用している子どもたちも初めから一緒にいるため、障害の有無も気に留めていない子が多いそうです。

しかしながら、放課後デイでは送迎が認められているが、学童に関しては認められていないという大きな課題があると述べられていました。

この問題の要因としては制度の管轄の違いがあります。

そのため、sukasuka-kidsでは自前で送迎車を出しているとのことですが、働く親御さんの実態やニーズを考えた場合、制度を変える必要があるとのことでした。

お三方の報告が終わったあとは、当日コメンテーターを勤めたDPI副議長の尾上浩二、常任委員の海老原宏美との意見交換が行われました。

尾上浩二と海老原宏美

京香さんと智宏氏には、今までの学校生活の中でポイントになった点はどこにあるかということ、五本木氏にはインクルーシブ学童を立ちあげる際に苦労した点、工夫された点、今後の課題について尾上から質問がありました。

京香さんと智宏氏のお答えとしては、バクバクの会との出会いと法制度の改正などが大きなポイントになったとのことでした。

しかし、小学校の1年~3年ほどまでは合理的配慮や社会モデル、インクルーシブ、学習補助という視点がなく、学習空白があり京香さん自身も辛い思いをされたそうです。

お二人の報告からインクルーシブな今の学習環境は、ご本人を中心とした多くの方の連携と試行錯誤があったことが非常によく伝わってきました。

そして、五本木氏からは移動支援としての送迎ができないという点が課題として非常に大きいことが再度、述べられました。

登壇者の意見交換の後には、会場からの質疑応答がありました。当日は現役教員の方も多く参加されていて、忌憚ない意見交換が行われました。

成果報告会は午前・午後と長時間にわたっていましたが、非常に内容が濃く、文化・芸術や教育の切り口からインクルーシブについて考え、共有することの重要性を改めて感じることができました。

林 慶史(日本自立生活センター(JCIL)事務局長、DPI常任委員)

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