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支援学校への就学決定取消しを求める訴訟・横浜地方裁判所判決に対する抗議声明

2020年03月23日 要望・声明インクルーシブ教育

2020年3月23日

支援学校への就学決定取消しを求める訴訟・横浜地方裁判所判決に対する抗議声明

認定NPO法人DPI日本会議
議長 平野みどり

DPI日本会議は、障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会を実現するための取り組みを進める、全国95の加盟団体からなる障害当事者団体です。私たちは障害当事者の立場から「障害のある者とない者が、地域の学校へ通い、ともに学ぶ教育を行うこと」を、結成当初から主張しています。

地域の小学校への就学を希望していたにも関わらず、支援学校へ就学決定された川崎市のKさんは、支援学校就学決定の取消し・地域の小学校への就学決定を求め、県教委・市教委を相手に訴えを起こしていました。

しかし、3月18日に横浜地方裁判所(河村浩裁判長)が、訴えを却下する不当判決を出したことに対し、DPIとして抗議声明を表明するものです。

障害者権利条約では、障害のある人が他の者との平等を基礎として、障害のある者とない者がともに学ぶ、インクルーシブな教育を行うことが明記されています。

また、文部科学省は、障害者権利条約批准に先立ち、2013年に学校教育法施行令の就学の仕組みを改定し、それまでの障害程度による基準ではなく、総合的な観点から判断し就学先を決定する仕組みとしました。その中でも特に本人・保護者の意見については「可能な限りその意向を尊重しなければならない」とされています。

ところが、今回の判決では、障害児だけが集められる支援学校も「インクルーシブ教育」と言い切り、障害者権利条約については全く触れず、またその視点からの考察も全く行われていません。

また、就学決定の総合的な判断は「専門家の意見の聴取も求めて」いるのであるから、本人・保護者の意向は、判断材料の1つに過ぎず、それをもって支援学校への就学決定を取り消すという原告の主張は認められないとしています。極めて一方的で偏りのある差別的な判断になっていると言わざるをえません。

さらに、本人が、人工呼吸器を使用する極めて重度な障害を持つ児童であり、たとえ他市で同様の児童の小学校への就学事例があるとしても、「当該市で今まで小学校への受け入れ事例がなかった」ので、不合理な差別とまでは言えない、としています。

このような判断が全国に広がれば、より重度な障害をもつ児童の就学は一切進まなくなります。今回の判決は、障害者権利条約、障害者基本法、障害者差別解消法等を全くわきまえないものであり、断じて許すことはできません。

また、図らずも、裁判官など司法関係者の「障害者の権利に関する意識向上」(国連・障害者権権利委員会の日本政府への事前質問事項)がいかに必要かを示したものと言えます。

この判決の2日前に、同じ横浜地方裁判所の大法廷で「津久井やまゆり園事件」の判決が出されました。差別のない共生社会を実現するためには、障害のある者とない者が場を分けられることなく、ともに学び育つことにより、幼少期から相互の理解を深めていく必要があります。

今回の判決に決して怯むことなく、Kさんの地域の小学校での学びを実現するために、また希望するすべての障害児の小学校就学を実現するために、改めて今回の判決に抗議の意を示すとともに、これからも、加盟団体をはじめ関係者とともに力強く取り組みを進めることを決意します。

▽支援学校への就学決定取消しを求める訴訟・横浜地方裁判所判決に対する抗議声明 2020年3月23日(ワード版)

▽3月18日 川崎就学裁判判決 原告らの請求が棄却されました

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