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名古屋城天守閣木造復元事業バリアフリー未設置に対する抗議

2018年05月09日 要望・声明バリアフリー

すでにメディア等でも報道されておりますが、名古屋城天守閣の木造復元に関して、エレベーターを設置しない方針を5月8日、名古屋市が打ち出しました。私たちはこの方針に強く抗議します。以下、抗議文全文です。名古屋市議会には、要望書を提出しました。


2018年5月9日

名古屋市長 河村たかし殿

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり

名古屋城天守閣木造復元事業バリアフリー未設置に対する抗議文
誰も排除しない名古屋城を!

私たちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は全国97の障害当事者団体から構成され、障害の種別を越え障害のある人もない人と共に生きる社会の実現に向けて運動を行っている障害当事者団体です。
名古屋城天守閣復元事業で名古屋市はエレベーターを設置しない方針を固めたと5月8日に報道されました。「史実に忠実」に復元するためエレベーターを設置しないという理由ですが、この名古屋市の決定に断固抗議いたします。
もともと事業計画は史実には忠実ではありません。スプリンクラー、電灯、耐震工事などは400年前にはなく、現在の建築基準に沿った整備です。史実と異なってもスプリンクラー等は設置するのに、なぜバリアフリー整備だけしないのでしょうか。現代に公費を使って新しく建てる建築物をバリアフリー整備せず、歩行困難な障害者や高齢者を切り捨てて、利用できないものにすることは障害者差別です。時代錯誤も甚だしいと言わざるを得ません。このような差別を名古屋市が行うことを看過することはできません。計画を再考し、エレベーターを設置するように強く求めます。

1. 「史実に忠実」という名のもとに障害者を排除している
計画によるとスプリンクラーが設置されるということです。これは400年前の史実に忠実でしょうか。400年前にはスプリンクラーはありませんでしたから、史実とは異なっています。屋内の照明は行灯ではなく、おそらく電灯を設置するでしょう。スピーカーなど館内アナウンス設備も必要でしょうし、トイレもつくるのであれば、汲み取り式ではなく、水洗式になるでしょう。これらはすべて史実に忠実ではありません。これは現代に建てる建築物ですから、現代の建築基準を遵守して設置するわけです。であれば、なぜバリアフリー整備だけやらないのでしょうか。多くの人が利用するものは史実に忠実ではなくても設置するのに、障害者や高齢者等が必要なエレベーターは史実に忠実という名のもとに設置しない。これは、障害者への差別です。

2. 公費で建てる新築の建築物をバリアフリー整備しないことは障害者差別です
名古屋城天守閣木造復元は、現存している歴史的建築物ではなく、新築の建築物です。現代に公費を投入して建てる新築の建築物が、バリアフリー整備をしないことは、全国的にも国際的にも考えられません。さらに、取り壊される名古屋城よりも建て替えた城の方がアクセシビリティが下がることは、到底納得できません。新築の建築物がより多くの人を排除するということは、現代を生きる人が利用する建物という視点が抜け落ちています。バリアフリー整備をせずに、階段を歩いて登れない人は利用できないように造ることは差別です。最上階までエレベーターを設置し、誰もが利用できる建物にすべきです。

3. 障害者権利条約に違反しています
我が国が2014年に批准した障害者権利条約では、第九条で障害者が社会参加するために他の者との平等を基礎として、物理的環境の整備を求めています。建物は障害のある者も利用できるように社会的障壁を除去するように整備することが求められています。
一般的意見2パラグラフ13では「アクセスの否認は、違反者が公的主体であるか民間主体であるかにかかわらず、差別行為に相当すると見なされる。アクセシビリティは、機能障害の種類を問わず、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、出生又は他の地位、法的又は社会的地位、ジェンダー又は年齢などのいかなる区別をも伴うことなく、すべての障害のある人に提供されなければならない」とし、すべての障害のある人にアクセスを提供しなければならないとしています。
また、一般的意見2パラグラフ15では「すべての新規の物品、製品、施設、技術及びサービスへのユニバーサルデザインの厳格な適用は、障害のある人を含むあらゆる潜在的な消費者による、その固有の尊厳と多様性を十分に考慮した方法での、完全かつ平等な、制限されることのないアクセスを確保するものでなければならない」とし、新規の施設は誰もが利用できるユニバーサルデザインにしなければならないとしています。

4. 障害者差別解消法に違反しています
障害者差別解消法では、障害とは社会的障壁であり、社会的障壁の除去を行政と事業者に求めています。第5条では「行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。」としています。

5. 有識者会議や当事者団体の意見の尊重を!
4月24日の有識者会議では、エレベーター設置に前向きな意見が多数を占めました。また、当初エレベーターを設置しないという方針が示されてから、地元の障害者団体は最上階まで行けるエレベーター設置を求め続けています。有識者会議、障害者団体の意見を尊重して計画を見直してください。

私たちは、上記の理由から、名古屋城天守閣木造復元事業では、すべての人が利用できるようにエレベーターの設置などバリアフリー整備を実施すべきと考えます。エレベーターを設置しないとする名古屋市の決定に断固抗議し、再考を強く求めます。

▽抗議文はこちらからダウンロードできます。(ワード)

▽名古屋市議会へは要望書を送付しました。こちらからダウンロードできます。(ワード)

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