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「旧優生保護法に関する骨子案概要(10月31日報道)に関する要望書」を与党ワーキングチーム及び議員連盟プロジェクトチームに送付しました

2018年11月05日 要望・声明権利擁護

旧優生保護法下における優生手術の被害者に対し補償を検討する法律の骨子案の概要が10月31日に報道されたことに関し、DPI日本会議は本日、「与党旧優生保護法に関するワーキングチーム」及び「優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟の法案作成のためのプロジェクトチーム」宛てに下記の要望書を送りました。

▽与党旧優生保護法に関するワーキングチーム宛の要望書(PDF)
▽優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟の法案作成のためのプロジェクトチーム宛の要望書(PDF)

以下、要望書全文


2018年11月5日
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり

旧優生保護法に関する骨子案概要(10月31日報道)に関する要望書

今年1月に宮城県の知的障害女性が提訴したことを受け、自民・公明両党でワーキングチームを立ち上げ、被害者への謝罪と補償について早急に検討していただいたこと、敬意を表します。この間、法案策定の行方を大変関心を持って注視して参りました。
DPI日本会議は、障害の有無に関わりなく、誰もが分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するための取り組みを進めている全国96の加盟団体からなる障害当事者団体です。私たちは障害当事者として、この問題は、障害者の存在を認めない優生思想に基づく犯罪行為であり、すべての障害者の存在、人権及び尊厳を否定することであり、国は被害者への謝罪と賠償等を早急に実施すべきと訴えてきました。
以上を踏まえ、10月31日に報道された骨子案概要に対し、意見を下記の通り述べさせていただきますが、骨子案が公表されていないため、メディア報道による概要への意見となります。速やかに公表されることを求めます。

1.法律名称について
「救済法」ではなく、「人権回復法」とすることを求めます。

【理由】優生保護法は障害のある人や遺伝性の疾患のある人を、「不良」と定義づけ半世紀近く存在しました。1996年に優生条項を削除し、母体保護法に変わってからも被害の声が挙がっていることからも明らかなように、未だ優生思想として社会に根付いています。
優生手術被害者だけでなく、全ての障害者への偏見・差別として今も生きています。2016年に起こった津久井・やまゆり園障害者殺傷事件や2017年寝屋川精神障害者監禁致死事件、本年2月に発覚した兵庫県三田市障害者監禁事件からも、優生思想が根底にあることは明らかです。よって「人権回復法」とすることで、単に被害者への補償のみで終わることなく、真に障害者の人権を回復し、再発防止策を明記することを求めます。

2.「おわび」の明記について
(1)「おわび」の文章を入れることを検討されていることを評価します。ただし、「おわび」ではなく、「謝罪」とすることを求めます。
(2)違憲性に言及し、何に対しての謝罪なのかを明記してください。

【理由】優生保護法は、障害者や遺伝性の疾病のある人々の子どもを持つ・持たないという極めて個人的な自己決定権を奪い、人としての尊厳を傷つけました。このことが日本国憲法に違反することは明らかです。
憲法違反であったことに対して明記した上で謝罪してください。

3.対象者について
強制不妊手術のみでなく、同意に基づく手術、書類の有る・無しや術式に関わらず、広く対象としたことを評価します。しかし、法を逸脱した子宮・睾丸摘出、放射線照射などは、1996年以降の手術についても対象とすることを求めます。

【理由】法律改正後も、障害女性の月経介助軽減のため等の理由で子宮摘出等の手術が行われています。法を逸脱した手術は、法律の規定によらないため、法律が改正された1996年時点に限定せず対象とされるべきと考えます。

4.通知について
(1)行政が把握できている被害者に対して、被害者の人権に充分配慮した上で原則通知することを求めます。
(2)申し出期間は5年とのことですが、限定しないことを求めます。

【理由】むやみに通知することは、家族に知られたくないという人や、嫌なことを思い出させて再び被害者を傷つけることとなってしまうことは、想像できます。
しかし、本人が申請できない理由には様々なケースが考えられます。障害特性により自ら申し出られない、被害者であると認識していない等です。まずは「あなたの人権を傷つけたので、謝罪して尊厳を回復したい」と述べ、障害者への偏見・差別をなくす取り組みを行うと同時に、後述の認定審査会で慎重に議論し、通知すべきと考えます。
それでも通知が難しい場合、本人が自分から申請できるよう、人権回復の法律ができたことと申請の方法を、広く広報していただくことを求めます。行政が把握できていない多くの被害者にとっても、これは必要不可欠です。
なお、広報媒体や方法については、新聞での一面広告やウェブ、例えばろう者や知的障害者にもわかりやすい言葉やイラストを使ったパンフレット、手話・字幕付き動画、録音テープなど多様な媒体を使って広く当事者や家族に伝えることを求めます。このような丁寧な審議、及び徹底通知を行うために、5年という期限は短すぎます。

5.支援内容について
対象者に対して、海外の事例を参照して一律の一時金を支給するとのことですが、社会保障体制などが違うため、現在の日本の社会状況に見合う金額とすることを求めます。

【理由】その他の社会保障制度が整っている国と日本では、補償金額の重さが違います。

6.認定審査会(仮称)について
(1)厚生労働大臣所管の第三者審査会を設置するとのことですが、被害者・障害当事者、支援者、医療・福祉関係者を構成メンバーとする独立した機関とすることを求めます。

【理由】これまで優生保護法について「当時は適法であり問題はない」との対応を続けてきた厚生労働省内では、公平な認定が行われるかどうか担保できません。

(2)書類の無い被害者の認定に際し、手術痕の確認を前提としないこと。

【理由】被害者本人にとって傷を見せるという精神的苦痛や、その他の疾病等があったり古い手術痕の確認が困難な場合もあります。

7.検証委員会(仮称)の新設について
再発防止と人権回復への取り組みとして、被害者・障害当事者・支援者・研究者を構成メンバーとする第三者機関としての検証委員会の設置を求めます。

【理由】高齢となる被害者への謝罪や補償を急ぐことは必要ですが、それとは別に「なぜ日本国憲法下で、このような人権侵害が行われたのか?」を調査・検証し、二度とこのようなことが起きないようにすることが重要です。

以上

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